Q&A② 《筆が割れることについて》 筆を送って下さり、お手数をお掛けしました。 良く見ましたが、筆が割れだした原因は正直良く分かりませんでした。一応、完全に墨を洗い 流がし、フノリで固め直したので、再度、適当なところからおろしてお使い下さい。細筆なら上から 3分の1くらいのところが、大筆なら上から3分の2くらいのところが、いいかもしれません。 以下、一般的なことを述べておきたいと思います。 あえて言えば、例えば、魚釣りの場合、「釣竿」や「糸」が無理をすれば折れたり切れたりする ように、筆も元々割れるものです。それを踏まえたうえで、職人はどうしたら(どんな形にしたら、 原料をどのように組み合わせれば、など)割れにくいか、更に、他の職人さんより割れにくい筆を 作ろうと努力しています。これは、作り手の問題、筆自身の性能の問題となります。(原因A) 次に、使い手の原因もあると思います。大きな魚がかかったからといって、一気に引っ張れば 竿や糸は折れたり切れたりします。釣り手は折れる寸前で少し緩めて調整します。筆も同じような 扱い方が必要だと思います。(原因B) 墨や紙も割れる原因に影響します。墨の粒子が大きく粘っこいと割れやすいです。(墨の値段の 安いものや、墨液にはこの傾向あり) 紙も滑りの良いものはわれにくく、墨の吸い込みが激しく 筆がスムーズに動かなければ割れ易くなります。(原因C) さらに、ノリ固めした筆をどこでおろすかにも注意が必要と思います。(原因D) 例えば、ほとん どの細筆(小筆)は、先だけを少しおろして使うことを想定しているので、多めにおろしたり、全部 おろすと割れて使えなくなる場合があります。(特に、中国筆はこの傾向大です) 細筆・大筆に 限らず楽々堂の筆は全部さばいて使っても割れにくいように気を配って作ってはいますが・・・。 また、筆の寿命も影響します。(原因E) 羊毛筆は少し使った頃に性能が100%に達しますが、 他の筆は(特に細筆は)、新品が性能100%で使うほど悪くなります。使うほど筆先がすり減った り切れたりして、割れの原因になります。 (使用する頻度、日数で何か月くらいの寿命があるか はまちまちですが…。) さらに付け加えれば、これが一番の原因かもしれませんが、使い終わった後の、墨の洗い方が 不十分なために、軸際のところに墨が溜まってしまって筆が軸からはみ出すようになっていること があります。(特に低価格の墨汁の場合にその傾向が大です) こうなると筆は墨の量がなくなる と、すぐ割れてしまいます。洗う時には軸際を手で良く揉んで、墨色が出なくなるまで気長に洗って 下さい。(原因F) 以上のように、色々と原因(A~F・・)が考えられますが、複数の原因が重なり合って、筆が割 れるようになると思います。 筆職人としては、少々無理をしても筆が割れないように、最も努力し苦労している所ではありま すが、筆を使われる方も墨(筆)の洗い方に充分気を配ってください。お互いの努力で筆が長期 間、気持ちよく働くことが出来ることを願っております。 まだ筆が新しい内に、墨が溜まったりして自分ではどうしようもできない時、割れる原因がどう してもわからない場合の時は、筆を送って下さい。こちらで判断して対処致します。(他店の筆で も構いません) 墨落としやノリ固め程度なら、送料+αでいたします。もし本格的な修理をする 場合は実費をいただくことになりますが…。(筆が届いた時点で原因や見通しを電話連絡いたし ます。) 以下、送られてきた筆について、具体的に気が付いたことを書いておきます。 ・・・略・・・ ⇒【Q&A 戻る】 ⇒【トップページ】 |